耐用年数と経済的耐用年数 減価償却資産の耐用年数等に関する省令

耐用年数と経済的耐用年数

耐用年数と経済的耐用年数 ふつう耐用年数といえば減価償却資産の耐用年数等に関する省令に従って決定され、その耐用年数に従って減価償却費を計算すると思うのですが、世の中にはふつうの耐用年数の他に経済的耐用年数と呼ばれるものがあります。

耐用年数と経済的耐用年数

耐用年数とは

耐用年数(たいようねんすう)とは、減価償却資産が利用に耐える年数をいう。 長期にわたり反復使用に耐える経済的に価値があるものの使用又は所有の価値の減価を、各年度に費用配分していく場合の、計算の基礎となる。

経済的耐用年数とは

税法上の法定耐用年数とは異なり、物理的要因、機能的要因、経済的要因による劣化を総合的に勘案して経済的に使用できる残りの寿命を判定します。

つまりは、法定耐用年数とは異なり、そのモノ自体が実際にはどれくらい使えるのか?見積もったその期間をいうんですね。例えば車両であれば、過去の一定数の車両の取得日から廃車日までの期間を調べてその使用期間のその平均値を取るみたいな統計学的な調べ方で良いのかな。

実務において

経済的耐用年数を調べることになったキッカケ

いま会社において、5か年計画という予算編成をしています。その中で私も連結会社である一つの会社の計算係?みたいなものを任されました。仕事としては、その会社の各々の営業部が建設改良の予算を持ってきたら減価償却費を計算してあげたり、営業部から予算についての相談があったら、前年にはこんな経費があったからこれは来期も見込んだほうが良いんじゃないですかねー?ってアドバイスするみたいなかんじです。

減価償却費の計算はもちろん「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」

この表にあてはめて、その償却率に従って5年分の減価償却費を計算しています。

たくさんの建設改良予算が持ち込まれてきたんですけど、その中で1つだけ、会社の規模に対して投資額のとても大きなモノがありました。私はいつも通りに上記の減価償却資産の耐用年数等に関する省令に従って「耐用年数5年」で減価償却費を計算して、営業部に返しました。

するとその営業部の部長さんが怒って私のところに怒鳴り込んできたのです。

営業部長:「なんだ!この減価償却費は!ナメとるのか!こんなに減価償却費が出たらすぐに2期連続で赤字、買った途端に減損になるのが確実になってしまうじゃないか!何を考えとるんだ!」と。

私:「これは減価償却資産の耐用年数等に関する省令に従って耐用年数5年で計算しました。」

営業部長:「こんなの5年で壊れやせんわ!経済的耐用年数で言ったら10年は余裕だわ!計算しなおせ!!」

と、こんなかんじで怒られました。ふむ、経済的耐用年数か。名前は聞いたときあるけど、本当にそんな勝手に耐用年数を変えて計算しても良いのかな。企業会計上はそれは認められているのかな?会計士につっこまれたりしないのかな?と疑問を持ちながら私の上司に相談すると。

私の上司:「あの部長はウルサいから10年でやってあげて。」とのこと。

なんてユルい会社。弱い上司。言ったモン勝ちですね。

計算上の違い。法人税法と企業会計

  • 投資額100,000,000円
  • 200%定率法
  • 法定耐用年数5年 償却率0.400
  • 経済的耐用年数10年 償却率0.200

法人税法では減価償却費について。

内国法人が各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費としてその事業年度の損金の額に算入する金額は、その事業年度において償却費として損金経理した金額のうち内国法人が選定した償却方法に基づき計算した償却限度額に達するまでの金額とする。

とあります。

法定耐用年数で計算すれば1年目の減価償却費は「40,000,000円」税法上の償却限度額も40,000,000円となる。

経済的耐用年数で計算すると1年目の減価償却費は「20,000,000円」となる。税法上の償却限度額は40,000,000円だから、20,000,000円ー40,000,000円=△20,000,000円‥是認。

法人税法では償却限度額に達するまでの金額なら会計上の減価償却費はいくらでも良いですよ~と言ってるので、耐用年数10年で計算しても問題はなさそう。ただ所得が20,000,000円分は増えるので会社は損をしますよね。

でも、企業会計では減損会計というやっかいなモノがあるので、それを回避するためにこういう策を取るというのも戦略なんですね。営業部長に怒られて良い気はまったくしなかったけど、ちょっと勉強になりました。